華南のPM2.5-26

現在の地場自動車メーカの排ガス対策について調べた事をまとめてみます。

現在、中国国内で策定されている環境保護・省エネ、排ガス削減規制のなかで、自動車関連業界に影響を及ぼすものとしては、『軽自動車汚染物質排出規制値および測定方法』、『省エネルギーおよび新エネルギー自動車産業発展計画(2012年-2020年)』、『自動車用ガソリン国家基準』の3つの規制を挙げている。

①エンジン
排ガス排出量低減の有効な方法とされているのがエンジンの小型化であり、従来からエンジン技術の発展トレンドにもなっている。これは従来の大型サイズのエンジンをベースとして、技術革新によってエンジンのダウンサイジングを進め、排出量を低減する。但し、エンジン性能は低下させず、むしろ向上させる。
エンジンの小型化を実現する技術としては、直噴(GDI)、ターボチャージャーまたは機械式チャージャー(TSI)、層状燃焼(FSI)および予混合圧縮着火(HCCI)、可変バルブタイミング(VTEC)等の技術が挙げられる。
②排気システム
その役割は完全燃焼していない汚染物質を通過させ、排ガス中の有害物質を低減させることである。
③トランスミッション
エンジンの回転速度と駆動輪の実際の走行速度を調整する変速装置であり、エンジンの最高性能を発揮させる役割を担うが、同時に自動車の燃費効率や性能の向上のために有効な機能でもある。
排気ガス中の有害物質の濃度は、エンジンの低速および高速運行時に高くなる。しかし、トランスミッションシステムの最適化設計によって、エンジンを常に経済的な回転速度域内に制御し、最も効率のよい燃費・機動性を確保することによって、排ガス中の有害物質を低減させることができる。

自動車部品メーカーは、中国および各地域で施行されている排ガス排出基準をクリアするため、主に車両本体メーカー(完成車メーカー)からの製品や技術に対する要求に基づいて、上記分野の性能向上や改良を行っている。しかし、その状況は合弁・外資企業と国内企業で若干の違いが見られる。

以下、合弁・外資企業の開発事例を挙げる。
①一汽大衆汽車有限公司成都発動機工場のエンジン開発
開発技術:全アルミ材質、気筒休止システム技術
2012年ジュネーブモーターショーにてフォルクスワーゲングループが新型エンジンEA211型の技術を発表した。現在は一汽大衆汽車有限公司成都発動機工場で生産されている。これは、小排気量の四気筒エンジンに初めて気筒休止システム技術を採用した。また、EA211シリーズのエンジンは全アルミ材質による製造を実現し、これまでのEA111シリーズのエンジンに比べて22kgの軽量化が行われ、燃費の面でも優位性を持たせることに成功した。燃費および二酸化炭素排出量を10~20%削減し、ユーロ5排出基準に準拠して開発生産された。

②博格華納連合伝動系統有限公司(BWUTS)のトランスミッション開発
開発技術:DualTronic制御モジュール、クラッチモジュール
博格華納連合伝動系統有限公司(BWUTS)は、一汽集団の主力の“紅旗”セダン向けに2013年末、統合型粘性ねじり振動ダンパのDualTronicR制御モジュールとクラッチモジュールの供給を始めた。この技術は湿式デュアルクラッチ変速機技術(DCT)の重要な構成部であり、優れた耐熱性、摩耗のないクラッチ板や高いトルク容量を持ち、自動車排ガス排出の低減にも貢献する。
2)国内企業における新規制対応自動車エンジンの開発
自動車エンジンの本体設計、電子制御システムおよび燃料噴射などのコアテクノロジーは、これまで欧州、米国および日本などの国々の企業が握ってきた。中国の自動車排ガス排出規制基準の制定以前、中国国内企業は関連部品の新材料、新プロセス技術の研究開発に注力してきたが、関連協会によれば、中国国内企業は「技術面において海外や国内合弁企業のレベルに達していない」という。

国内企業のエンジン開発事例を挙げる。
①奇瑞汽車股?有限公司
開発技術:燃焼速度制御(CBR)、可変位相(VVT)、ターボチャージャーインタークーラー(TCI)等
奇瑞汽車の自社開発したACETCOエンジンは2007年9月、A1およびA5モデルに搭載された。同シリーズのエンジンは中国国産ブランドとして初のエンジンであるが、オリジナルではなく、海外技術を統合させた仕様であるという。実際に燃焼速度制御(CBR)、可変位相(VVT)、ターボチャージャーインタークーラー(TCI)、高圧コモンレールディーゼル直噴(TDI)、エンジンコンピュータマネジメントシステムなどは海外の先端技術を採用。エンジンの動作状況に応じて、混合気体の燃焼速度を制御し、バルブ開閉のタイミングを調節することで、エンジンの動力性能や燃費を大幅に向上させている。また、排ガス再循環(外部EGR)および残留排ガス(内部EGR)、密結合三元触媒などのキーテクノロジーを採用し、有害な排ガスの排出量を大幅に低減させており、2008年に北京で最初に施行された“国四”排出基準に適合している。2013年、奇瑞汽車はこのエンジンを改良・応用し、奇瑞瑞虎などのモデルにおいて「国五」排出基準をクリアした。
②天津一汽夏利汽車股?有限公司内燃機製造分公司
開発技術:ISSインテリジェント燃料システム、VCT-iバルブタイミングシステム
2012年に天津一汽夏利が生産する「威志V5型乗用車」に搭載されたISSインテリジェント燃料システムはエンジンインテリジェント起動システムに分類され、エンジンの低速運行時間を低減することで低燃費を実現する。また、同時に、自社生産のCA4GAS5エンジンを動力の心臓部として搭載。このエンジンにはVCT-iバルブタイミングシステムを採用し、燃費を向上させ、燃料の燃焼効率を助けることで「国五」排出基準の要求をクリアしている。
以上のように、中国企業においても独自の新基準対応エンジンを開発しているが、複数の協会にヒアリングを行なったところ、「こうしたエンジン開発は主に海外の完成された技術を一部導入し製造されたものであるケースが多い」という。すなわち、上述の奇瑞汽車のエンジン開発の例のように、自社ですべての部品やシステムを開発するのではなく、海外メーカーの部品を組み合11

わせることで、基準対応のエンジンを生産している。国内メーカーの新基準対応エンジンやトランスミッション開発においては、海外の技術(製品)に依存する部分が存在している。

中国における自動車用ガソリン基準
国家標準化委員会は、自動車排ガス浄化システムの能力向上、自動車汚染物質排出削減を推進するため、2013年6月および12月に、それぞれ第五段階自動車用ガソリン国家基準(「国五」ガソリン基準と略称)および第五段階自動車用軽油国家基準(「国五」軽油基準と略称)を発布、施行した。このアップグレードの中国全土での適用には猶予期間が与えられており、その期間は2017年12月31日までとされ、2018年1月1日より中国全土で施行が開始される予定である。
一方で、華東地域の上海市および江蘇省では、「国五」ガソリン基準およびユーロ5ガソリン基準を参照して、2013年にそれぞれ「?五」および「蘇五」の自動車用ガソリン基準を制定。全国に先駆け、上海市はすでに全面施行し、また江蘇省は一部の都市で施行している。
施行状況の詳細は以下の通り。
華東地域の江蘇省、浙江省、上海三地域における自動車用ガソリン基準の状況:地域 施行基準名称 施行時期 備考
全国 “国五“自動車用ガソリン基準 2018年1月1日 —
上海市 “?五”自動車用ガソリン基準 2013年12月1日 —
江蘇省 “蘇五“自動車用ガソリン基準 2013年11月1日 最初の施行都市は南京市、無錫市、常州市、蘇州市、南通市、揚洲市、鎮江市および泰州市の八都市。
2018年1月1日 八都市以外の都市にて施行開始
浙江省 “国四”自動車用ガソリン基準 2014年1月1日 —
“国五“自動車用ガソリン基準 2018年1月1日

“国五“とはEURO5に相当する規格で事実上ユーロに準拠。

中国の自動車産業において燃費規制への対応策として、以下のようなものがあげられる。ハイパワーエンジン、トランスミッション、本体設計の最適化・軽量化
①エンジン
主にディーゼルコモンレール、直噴ガソリンエンジン、均質燃焼およびターボチャージャーなどのハイパワーの内燃機関技術および電子制御技術の開発が、燃費効率向上の目的で行われている。
例:長安福特汽車有限公司発動機場
技術キーワード:Ti-VCT吸排気独立可変バルブタイミング技術、シリンダー内直噴技術、ターボチャージャーシステム等
2013年、フォードのEcoBoostシリーズのエンジンが既に長安福特汽車有限公司発動機場にて生産されている。このエンジンはTi-VCT吸排気独立可変バルブタイミング技術、シリンダー内直噴技術、ターボチャージャーシステムおよび低抵抗のピストンコーティングなどの様々な技術を統合し、正確な燃料噴射量と噴射時間によって、エンジンが低速運行時でも燃料を最大限燃焼できるようになっており、その燃費削減率は20%に達する。
②トランスミッションシステムの改良
6段階以上の機械式変速機、デュアルクラッチ式自動変速機の使用が挙げられる。より高い燃費効率を実現するため、トランスミッションシステムにおいて、自動変速機(AT)から無段階変速機(CVT)およびデュアルクラッチ自動変速機(DCT)へと発展の方向性を転換し燃費向上を図った。

奇瑞汽車股?有限公司
技術キーワード:自社開発、燃料経済性
奇瑞汽車は2012年3月、自社開発の無段階変速機(CVT)の開発に成功。奇瑞汽車のE5型自動車に搭載された。この変速機は、高い信頼性、優れた燃料経済性、良好な動力性、高インテリジェント化など、ハイレベルのテクノロジーを謳い文句にしている。なお、この変速機の研究開発プロセスにおいては、英国リカルド社の技術やエンジニアのサポートを受けている。

上海通用汽車有限公司
技術キーワード:空気抵抗係数0.27
上海通用汽車有限公司は、ビュイックおよびリーガルの車両外形および構造の設計を見直すことで、その空気抵抗係数を0.27に抑え、燃費を7%前後削減した。ちなみに通常の乗用車の空気抵抗係数は0.28~0.4程度である。

中国自主ブランドの完成車メーカーにおいては、「国五」排出基準を満たしていない車種が比較的多い。しかしながら、メーカーによれば「エンジン部品や排気システムなどの改善により新たな国家基準をクリアすることは可能」としており、「その技術導入およびコスト償却後、各車両生産コストの上昇は2,000元から3,000元前後に抑えられ、しかも全体として十分な時間的猶予が与えられている」としている。こうした中国国内メーカーの自信の背景には海外の先端技術を持つ部品メーカーと提携して先端的な製品や技術を獲得することで最新の自動車排ガス排出基準、自動車ガソリン燃費規制基準をクリアするという戦略がある。

大雑把に中国の自動車業界の動向を俯瞰してみました。

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